主人公()・幸(さ()ち)は、木綿の産地摂津国(()現大阪北中部あ()たり)の生まれ。元武士で商人を毛嫌いす()る父に育てられます。兄と父が急死、母と妹・結を残し、大坂天満(おおさか()てんま)の呉服屋「五鈴屋(いすずや)」に女中奉公に入ります。「商いは邪道」と教えられていた幸ですが、五鈴屋の商いを目の当たりにし、その面白さに心を奪われます。幸の商才()に気付いたのが三男・智蔵()と番頭の治兵衛(じへえ)、先々代(二代目)の御寮さんの富久(ふく)でした()。五鈴屋は、古手の行商から商いをはじめ、二代目の時に大坂天満に呉服を扱う店()を構えました。しかし()、三代目夫婦が早逝、商売を継いだ四代目・徳兵衛(と()くべえ)は、商いに身が入らず、放蕩の限()りを()尽くしてい()まし()た。傾きかけた店を立て直すため()、四代目徳兵衛()に船場の大店から嫁・菊栄を迎えますが、徳兵衛の放蕩は結局収まらず、数年で離婚。すでに、悪評の立つ()四代()目のもとに新()たな嫁は見つかるはずもありません。そんな中、番頭の治兵衛がお店を守るために白羽の矢を立てたのが、女衆である幸を後妻に()迎えるこ()とでした。物の売れない時代、「()商いの戦国時代」を生き抜くため、「買うて()の幸い、売っての幸せ」を追い求め、幸は()全力であきないに向き合います。
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